aoakame2005-04-17


久々に音楽の話を。


今日みたいな春らしい気持ちの良い日には(月並みだけど)西海岸のJAZZが聴きたくなる。
エストコーストジャズといえば何といってもチェットベイカーなのだけれど、中でも初期の演奏は、何というか、心に響くものがある。


このチェットのソロでの初のレコードは、パシフィックジャズの10インチがオリジナルなのだけれどオリジナルは1万円を超えてしまうから、僕は東芝EMIが再発した12インチで我慢している。

でも、まだ23才のチェットがラス・フリーマンの弾むようなピアノトリオをバックに溌剌としたトランペットを聴かせてくれるこのレコードは、オリジナルとか再発とかいう枠とは無関係に素晴らしい。


まだあの有名なボーカルはなく、トランペット一本だけの演奏なのだけれど、若さゆえの向こう見ずな明るさ・爽やかさに溢れている。そして演奏が明るく快活であればあるほど、聴いている僕らの胸は不思議と切なくなる。チェットのボーカルが漂わせているメランコリックさとはちょっと違う種類の感覚。B面のPAVANE→RUSSJOBと続いていくところが特にこの感覚を強く味わわせてくれる。



このレコードについては、村上春樹氏が「ポートレートインジャズ」というエッセイの冒頭で素晴らしい文章で(僕が言いたかった何かについて)すごく良く表現してくれている。チェットの音楽も素晴らしいけれど、春樹氏の文章も本当に素晴らしいので興味のある方は是非読んでみてください。


ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)

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